選曲、曲順を考える-バリオス

アウグスティン・バリオス(1885~1944)は、ギター音楽の世界では人気の高い作曲家である。生まれがパラグアイという南アメリカの国だということ、インディオの格好をしたバリオスの写真が残されていることから、民族色の強そうなイメージだが、民族色の強い作品ばかりではない。バリオスが活躍したのは20 世紀前半、時代だけでみれば近現代の作曲家になるが、作風とすれば伝統的、そして豊かなメロディーラインを持つ作品が多く、ロマン派の作曲家と言うのが自然だ。

私の場合、バリオスを余り弾かない。と言うのも、まず技術的に難しい。「郷愁のショーロ」には、1の指(人差し指)と2の指(中指)の股裂き的開脚(人差し指が1フレット、中指が5フレット)を強いられる部分がある。どの作品も左手の難所が多い。バリオスさんの手は大きかったんだろうね。また音楽的にも難しい。メロディー、和声、リズムどれをとっても非常に明解なために(明解すぎるために)、ちょっとの傷が音楽を壊しかねない。演奏に集中力が要求されるのだ。多くの演奏家は「モーツァルトは難しい」って言うでしょう。あれと同じだ。

しかし時間、エネルギーに余裕が有れば、私は、バリオス作品をもっと弾きたいと思っているのだ。

バリオスはソナタや、組曲など複数の曲でワンセットとなる作品を殆ど残していない(大聖堂は例外)。従ってバリオス作品を演奏するときは選曲、曲順を考える機会が増える。

バリオスに限らないが、一人の作曲家の作品を何曲かまとめて演奏する場合、選曲、曲順にはかなり気を使う。演奏する順番によって、個々の作品の印象はかなり違ったものになるからだ。

家具の置き場所により、部屋全体の印象は大きく変わる、それと同じだろうか。
花一本、葉一枚の配置に神経をとがらす生け花の世界も同じかもしれない。

そもそもクラシック音楽には確立された曲の構成・順序というものがある。バロック時代の組曲、古典派時代のソナタなどは、長い時間をかけて形式が整えられたものだ。ポイントは、

# 性格の異なる曲で構成される
# 終曲には、スピーディで活発な曲が置かれることが多い
# ゆっくりした曲が必ず1曲入る
# リズミカルで躍動感のある曲が加わることがある
# 調性に統一感がある

などであろう。

ところでギターには調弦というやっかいな問題がある。また調性によって6番の弦、5番の弦の音程を変えることは日常茶飯事だ。調弦による曲間の間延びは仕方ないとして、連続した曲を弾くとき、弦の音程変更はできるだけ避けたいものだ。

以上の条件の中、バリオス作品の選曲・曲順を次のように考えてみた。

パターン1.調弦を変えない曲の組み合わせ
a.前奏曲ハ短調
b.人形の夢
c.最後のトレモロ
d.マヒーヘ
これらの曲には調性上の関連は無い。曲の流れを意識したものだ。

パターン2.全曲をニ短調、ニ長調の曲で統一。6弦がレで統一される。
a.ワルツ第3番
b.つむぎ歌
c.フリア・フロリダ
d.パラグアイ舞曲第1番

パターン3.全曲をト短調、ト長調の曲で統一。6弦はレ、5弦はソになる。
a.ロンドンの想い出
b.ロマンス第1番
c.郷愁のショーロ
d.森に夢見る

ロマンス第1番は実に良い曲だと思うのだけれど、何故か演奏されないですね。リピート部分はくどいから無い方がいいだろう。

パターン4.パターン3.と同じ
a.郷愁のショーロ
b.ロマンス第1番
c.森に夢見る

いろいろな作曲家で、曲の組み合わせを考えてみたい。

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